華やかな職種。
という印象をもたれるアパレル販売員。
販売員をしている方の中には「とにかく服が好き」で「アパレル販売員になること」をゴールにしていた方も多いのではないでしょうか。
しかし、自分を取り巻く環境や求めるものは次第にかわっていきます。
結果「今の働き方がベスト?」と不安に思うこともありますよね。
なかなかお給料が上がらない。
そろそろ販売員からステップアップしたいんだけど…
日々の業務内容に慣れてくると、このような悩みに直面することも珍しくありません。
とくに女性は、ライフステージの変化が働き方に大きく影響することも。
その場その場で働き方を見直していては「これまでの経験を活かせない」。
なんてことにも、なりかねません。
早い段階で「理想」と「現実」間のギャップに気づくためには、現職でのキャリアパスを把握する必要があります。
そこで本記事では、
- アパレル販売員のキャリアパス
- 職種ごとに求められるスキル・経験
- 職種ごとの平均年収
について、まとめました。
- いつまで販売員をつづけようか迷っている
- 販売員からのステップアップが想像できない
とお悩みの方は、ぜひ最後までご覧ください。
アパレル販売員のキャリアパス
本章では、アパレル販売員のキャリアパスと職種ごとの業務内容、必要スキルをまとめました。
以下の職種について、順に紹介します。
- 副店長・店長
- エリアマネージャー
- ディストリビューター
- プレス
- マーチャンダイザー
- ヴィジュアルマーチャンダイザー
販売員は基本的に、店舗から本社への異動を前提としたキャリアパスが提示されています。
上記リストでは、ディストリビューター以降が本社勤務という認識でご覧ください。
聞きなれない職種もあるな~
意外と店舗とのやり取りが多いポジションもありますよ。
副店長・店長
店舗づくりの指揮をとる!
販売員からスタートし、最初にめざせるポジションが副店長、そして店長です。
昇格には、以下のケースが想定されます。
- 自店で任される
- 異動して他店で任される
- 新店舗オープンのタイミングで任される
副店長
店長不在時の代理としての役割もつとめ、店長の補佐役というイメージでしょうか。
接客販売はもちろん、レジ操作や帳票記入、スタッフ育成など、店長がになう業務内容を一部兼任するケースが多くあります。
また、本社や店長からの指示を各スタッフに浸透させたり、スタッフの意見をまとめ店長へ伝えたりとパイプ役もつとめる立場です。
店長
店長は上記業務のほか、売上管理と在庫管理、シフト作成、ディスプレイ管理など接客以外の業務にも時間をさかなくてはなりません。
本社からの指示はあるものの、日によってかわるお客さまの温度を肌で感じられるのは実店舗のスタッフ。中でも、日々の細かな調整やスタッフへの指示など「店舗づくり」の指揮をとるのは店長の役目です。
「今週は〇〇をしよう!」という店長のひとことで、売上が大きくかわることだってあります!
日々の取り組みが数字として評価される点は、やりがいを感じられるポジションといえるでしょう。
副店長と店長の業務担当範囲は、ショップにより大きくことなる点でもあります。
きっちり分かれているケースもあれば、ほぼ同じ業務内容を双方でになうケースなどさまざまです。
ただし、いずれのケースでも最終決定権は店長にあります。
副店長・店長職は、環境をほとんど変えず給料アップが見込める点、やりがいアップにもつながることが多いようです。
必要スキル・経験
- 一連の業務内容の把握
:接客、レジ操作、在庫管理などを自力で解決し、スタッフに教えられるレベルが求められます。 - 個人の売上目標の達成
:キャリアアップ時の評価基準のひとつ。(絶対ではありませんが、アピールポイントとして有効) - 売上管理、計画の立て方
:数字の見方、蓄積データに基づいた売上予測など、戦略的に売上アップにつなげるスキルが必要。 - ディスプレイ管理
:本社からの指示に応え、店舗状況も考慮しながら日々の微調整をおこないます。 - コミュニケーション能力
:店舗、本社スタッフとのやりとりのほか、社外とのやりとりがある場合も。(商業施設内での出店など)
エリアマネージャー
エリア内の業績アップを目標に!
エリアマネージャーへの昇格は、店長職を経験する必要があります。
なぜなら、店舗運営ノウハウをもって、特定のエリア内の店舗を統括するのが「エリアマネージャー」だから。
担当する店舗に足をはこび、売上の進捗管理やレイアウトチェック、在庫確認などをおこないます。
定期的な店長面談も欠かせません。
店舗での課題点に向き合ったり、スタッフ育成に注力したり、各店舗の売上アップにむけてその業務内容は多岐にわたります。
また、本社と店舗とのパイプ役もつとめます。
本社指示を各店長へ、現場での声を本社へ伝えるなど、本社と店舗間のギャップをうめる重要なポジションです。
この段階から本社勤務になることもありますよ。
複数店舗をまとめる能力と経験が必要であること。
その分、責任感も大きくなるため給与アップも見込めます。
必要なスキル・経験
- 店長職
:エリアマネージャーは複数店舗での安定した売上の実現が使命。店長職であらゆる施策を計画、実行、検証した経験が強みになります。 - コミュニケーション能力
:店舗とも本社とも深くかかわる機会が多いポジション。商業施設の担当者とおこなうミーティングに参加することもあります。 - タスクマネジメント力
:店舗間の移動や連絡業務にくわえ、店舗ごとにことなる問題解決策の提示、本社との連携など、さまざまな粒度のタスクを把握しこなすスキルが求められます。
DB(ディストリビューター)
めざせ、商品完売!
商品完売をめざし、商品動向の管理・分析や各店舗への商品振り分けをおこなうのが「ディストリビューター」です。
店舗ごとの商品の売れ行きをベースに、余剰在庫を好調店舗へ移動したり店舗規模にあわせた在庫の配分をしたりと、先をみこした分析力と瞬発的な判断力が求められます。
DBは店舗との距離も比較的ちかい職種です。
在庫消化を効率的におこなうには、現場の声が必要となることも。
数字データと現場スタッフの意見をもとに、的確に在庫をコントロールします。
私の元職場でも、DBと店舗とのやりとりは活発でした。
とくに、人が集中しやすいイベント期間は、店舗売上に大きく影響します。
DBによる細かな在庫調整のおかげで、店頭の品ぞろえが確保されますよ。
必要なスキル・経験
- コミュニケーション能力
:本社、倉庫スタッフとの協力関係が仕事の精度に影響します。また、数字だけでは見えない現場からの声も貴重な情報源に。 - 分析能力
:在庫動向のデータをもとに直近から来年度分の在庫調整を、また店舗からEC分の在庫調整をおこないます。 - PCスキル
:Officeソフトをつかってデータ管理することが多いため、知っていると有利なスキル。 - 情報収集能力
:気温やアパレルの傾向など、短期~長期にわたるトレンドへの敏感さが求められます。
PR(プレス)
企業・ブランドの認知拡大へ!
ファッション雑誌をひらけば「〇〇のプレス」として顔をだす機会も多い職種。
販売員の中には、プレスに憧れる方も多いのではないでしょうか。
オシャレで個性的な人が多くて、憧れるな~
そんなプレスのお仕事は、広報や宣伝活動だけにとどまりません。
商品サンプルの管理や各媒体での原稿のチェック、取材獲得のためのプレスリリースもおこないます。
ほかにも、ショップブログの運営、DM・カタログの制作、販促物の計画・作成・管理など社内での業務も兼任するポジションです。
このように業務の幅が広い分、知識と経験がものをいう職種ですが、その華やかさから競争率が高いのも特徴。
未経験からのキャリアアップはむずかしく、販売員時代から意欲的にスキルアップに励むか、プレスアシスタントとして経験を積むことが必須です。
近年では、SNS運営やインスタライブを利用した商品紹介も盛んになっており、メディアの中心が雑誌からデジタル分野へ移行されました。
そのため、デジタルツールを活用したマーケティングを意識できる人材も求められています。
必要なスキル・経験
- ファッションセンス・知識
:自身の見せ方として「個性」は強い武器に。また、自社ブランドへの理解やファッションの歴史など知見を深めることは、自社ブランドのアピ―ルにおいて他社との差別化に役立ちます。 - コミュニケーション能力
:広報は「会社の顔」といっても過言ではありません。社外との関わりが多い職種である以上、相手との円滑なコミュニケーションは必要不可欠です。 - 語学力
:外資系ブランドや海外進出をねらっている場合、語学力は必須です。英語だけでなく、フランス語やイタリア語、韓国語もアピールポイントに! - PCスキル&文章力
:DM作成、原稿チェック、プレゼン資料作成といった事務作業も多い職種。基本的なPCスキルにくわえ、正確に情報を伝えられる文章力があると◎表現の仕方次第で、自社ブランドの魅力を2倍にも3倍にもアピールできます。 - プレスアシスタント
:販売員からのキャリアチェンジも可能ですが、プレスの幅広い業務内容を把握するためにはアシスタントからしっかりキャリアを積むことがオススメ。
MD(マーチャンダイザー)
企画・生産・計画・予算管理
を一手にになう!
「MD」と聞いてもピンとこない方が多いのではないでしょうか?
マーチャンダイジングとは「商品化計画」をいいます。
商品の企画から生産、販売計画、予算・売上管理までを一手にになうのがこのMDという職種。
企業と店舗、どちらの業績にも直結する重要なポジションです。
商品の売れ行きが数字としてあらわれるので、その分プレッシャーもかかるポジションです。
市場のニーズと商品の売れ行きなど、あらゆる視点から調査分析をおこない、お客さまが満足する商品を満足する形(価格・時期・数)でお届けする使命があります。
お察しのとおり、MD職もたしかな実績と経験が必要。
販売員時代から必要スキルを育てるか、MDアシスタントして経験を積むことが条件にあげられるでしょう。
一方、MD職を「バイヤー」と呼ぶ企業もあります。
MDと大きくことなる点は、バイヤーの業務内容が「商品の買い付け」に特化していることです。
ただし、その業務範囲も企業によりさまざま。
MD・バイヤーを希望する際は、職種名ではなく、その業務内容に注目しましょう。
必要スキル・経験
- コミュニケーション能力
:企画から販売までをになうMDは社内外での連携が重要に。 - PCスキル
:データ分析の際に使用する基本的なPCスキルが求められます。 - アパレル業界全般の知識
:トレンドを先取りする敏感さ、市場・顧客ニーズを把握する分析力、商品企画に必要なファッション知識を集約して商品化をすすめます。 - MDアシスタント
:MD業務をこなすには、データ分析が必須。MDアシスタントのお仕事は、そのベースとなる資料作成やデータ管理などの業務が中心です。徐々にスキルと経験を積んでいけるでしょう。
VMD(ヴィジュアルマーチャンダイザー)
ブランドイメージを正しく浸透させる!
VMDのお仕事は、企業・ブランドの世界観や魅力を「視覚的」に消費者へ伝えることです。
国内でも専門性が高まってきている職種でもあり、とくにアパレル業界では重要なポジションをになっています。
ショップに行くと、シーズンによって入り口の雰囲気がかわっていたり、店内の什器の位置がかわっていたりしませんか?
それらはVMDが関与している場合がほとんど!
日頃の店頭ディスプレイだけではありません。
新規出店やリニューアル、期間限定イベントの際は什器の手配から店内レイアウトまで、ショップづくりのすべてをこなすことも。
また、スタッフへのVMDトレーニングも欠かせないお仕事です。
アパレル企業にとって、他ブランドとの差別化は自社の売上を左右する重要な要素のひとつ。
ブランドイメージを正しく消費者に伝えることが使命のVMDは、アパレル業界では必要不可欠なポジションなのです。
一方、DBやMDにくらべ、売上に直結する結果がみえにくい職種でもあります。(=数値的評価がしにくい)
そのため、企業によっては営業成績に比例しVMDにかける予算を増減させることがあることも事実です。
なお、もともと求人数が少ない職種でもあるため、VMD職に就くのは狭き門といえるでしょう。
必要なスキル・経験
- ブランドへの理解力
:消費者へ正しいブランドイメージを伝えるためには、ブランドへの深い理解をもっていることが前提となります。 - コーディネートスキル
:「自社商品を着るとどうなるのか?」ブランドらしさとトレンド、両面からコーディネートスタイルを提案できるスキルが求められます。 - インテリア・建築への興味と知識
:世界観の演出には空間を支配するスキルが必要。ファッションセンスだけでなく、お客さまの導線までを考えた内装づくりに関する知識があるといいでしょう。 - 商品装飾展示技能検定
:厚生労働省に認められたVMD関連の技能検定。必須ではありませんが、保有していると就職に有利に働き、プロフェッショナルとして活躍できます。
職種別の平均年収
本章では、アパレル業界の職種別に平均年収を紹介します。
将来を考える上で収入面は気になるところ!
これからのライフスタイルと収入のバランスがとれるのか、見比べてみましょう。
アパレル業界に特化した転職支援サービス「クリーデンス」の調査によると、職種別の平均年収は以下のとおりです。
25歳~29歳 | 30歳~34歳 | 35歳~39歳 | |
---|---|---|---|
店頭販売 | 297万円 | 332万円 | 363万円 |
店長 | 340万円 | 376万円 | 415万円 |
プレス | 361万円 | 480万円 | 495万円 |
MD | 367万円 | 444万円 | 492万円 |
VMD | 361万円 | 412万円 | 461万円 |
調査期間:2021年1月~2021年12月
対象:クリーデンス転職支援サービス登録者
2020年、日本での給与所得者1人当たりの平均給与は433万円(男性:532万円/女性:293万円)という調査結果がありました。(参考:国税庁_民間給与実態統計調査)
この結果から、アパレル業界での平均年収は、決して多い額とはいえません。(調査対象期間にズレがありますが、おおよその平均給与としてご参考ください)
とくに、店頭販売職となると、35歳をすぎても日本国内全体の平均給与より70万円も低い結果となっています。
20~30代にかけては、ライフステージの変化がいちじるしくなる時期です。
将来をみこしての働き方を考えないといけない時期だね。
「将来どのような生活を送っていきたいのか」を考えるとき、イヤでも「お金」が関わってきます。
つまり、理想の生活にみあった働き方が求められるということ。
そのために、現職でのキャリアパスと平均年収の把握は必要な情報のひとつです。
くり返しになりますが、これからのライフスタイルと収入のバランスがとれるのか、上図を参考に考えてみましょう。
⇒収入が厳しいけど転職はちょっと…販売員にオススメのこんな副業あります
まとめ:現職でのキャリアパスを把握しよう!
販売員はお客さまとの距離がちかく、やりがいを直に感じられる職種のひとつです。
「服がすき」「接客がすき」という理由で、アパレル販売職をえらぶ方も多くいらっしゃるでしょう。
しかし「販売員になること」だけをゴールにしてしまうと、理想と現実との間にギャップが生まれてしまいます。
そうならないためには
現職でのキャリアパスを把握する
ことが重要!
本記事では、以下の職種をあげて販売員のキャリアパス、業務内容、平均年収について紹介しました。
- 副店長・店長
- エリアマネージャー
- ディストリビューター(DB)
- プレス(PR)
- マーチャンダイザー(MD)
- ヴィジュアルマーチャンダイザー(VMD)
所属する企業や、その規模によって、職種ごとの業務内容や担当範囲はかわってきます。(いくつかを兼任する場合もあるでしょう)
- まずは、アパレル販売員であるあなたが目指せるポジションを知ること
- そして、現職ではどのようなキャリアパスが提示されているのかを把握すること
そうすることで、理想と現実とのギャップがどこにあるのか、解決の糸口をみつける手助けとなります。
「このままアパレル業界でキャリアアップをめざしたい」
「将来像をかなえるには今のうちに転職した方がよさそうだ」
人により、めざすゴールはちがいます。
本記事が、あなたの働き方を見直すキッカケとなりましたら幸いです。
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